効果的な多読指導法:5つのコツ
(中学生・高校生・大学生編)

昨今、多読の効果や必要性が様々な書物や学会等で報告されて、多読を導入する学校が私立のみならず、公立でも徐々に増えてきているのは、日本の英語教育にとって喜ばしいことです。多読の効果はまず情意面に表れます。特に、英語嫌いが解消され英語に対する自信が出てきてモチベーションの向上が見られます。次に徐々に英語力が向上していきます。語学力に関しては読書スピード向上に始まり、リーデイング力、リスニング力、スピーキング力、語彙力、文法能力等が向上したという研究結果が発表されています。ところが中には多読を導入したものの余り本を読まない学習者がいる、とか、期待したほど学習者の英語力が上がらない、などと、多読に対して懐疑的な先生がいらっしゃるかもしれません。これまで様々な年齢層の学習者を学校で25年以上(個人指導は40年以上)多読指導をしてきた経験から、効果的な指導法の5つのコツを述べます。

[中学生・高校生・大学生の多読指導]

(1)多読図書の選択 (楽に読める本を50~100冊読破)

これは最も大切なことです。多読を持続させるには、学習者の読む気が起こるような図書を選択させる必要があります。読む気が起こる本とは、興味を引く内容であるのは勿論ですが、英語で読む場合は、楽に読める本でなければなりません。楽に読めるとは、辞書を使わず日本語訳をせずに読んで、内容の8~9割を理解できるレベルです。また、選択権があるのも魅力です。学習者の英語のレベルよりも易しくて面白そうな本を並べて、「この中から好きな本を選んでいいです。」というと、皆我先にと選び始めます。「読み終わった人は次の本と交換していいですよ。」と言えば、早く次の本を選びたいから皆真剣に読みます。多読開始から最初の2~3か月は、かなり易しい本 (YL = 0.3~0.6) を大量に(50~100冊)読ませて、日本語訳の癖を取り去ります。日本語訳をしながら読むと、読書スピードは上がらず、多読の大きな効果の一つであるリスニング力の伸びも期待できません。


(2)読書時間の確保 (Sustained Silent Reading:授業中に一斉多読)

次に大切なことは、学習者が読書に慣れてそれが習慣となるまでは、必ず授業中に10~15分間皆で一斉に読ませることです。授業の最初か最後の10~15分に読書時間を設け、その時間で読める程度の短い本(学習者のレベルに合わせて総語数が 100 ~1,500語)を読ませます。その時はストップウォッチが大活躍です。「10分間にどれだけ読めるか、はじめ!」 と声をかけて読ませれば、皆集中して読むため集中力が向上します。 朝の読書時間やホームルームの時間に、10~15分の読書時間が取れれば、毎日この読書訓練ができるので、効果が現れるのが早くなります。もし図書の数に余裕があれば、自宅でも毎日10~15分間読むために本を貸し出し、一人でも読めるように習慣つけをしていきましょう。


(3)レベルアップ方法(同じシリーズの同じレベルの本をまとめ読み)

多読初期に平易な本を集中して50~100冊 読み、日本語訳が出てこなくなり、読書スピードも速くなってきたら(wpm 100 ⇒ 150~200)徐々に本のレベルを上げて行きます。その場合、同じシリーズの本を5~10冊まとめて読み、レベルアップしていけば効果的です。 何故なら、同じ出版社の同じシリーズの本では見出し語(headword)が統一されているため、同じ語彙に遭遇する頻度が高くなり、読めば読むほど読みやすくなり、読書スピードも上がってきます。 結果的に習得語彙も増え、次のレベルへの移行がスムーズに行えます。また、中には同じ作家の本もかなり含まれているので、特徴的な話の展開に気付き、特定の作家にはまっていく学習者もいます。一番効率が悪いのは、様々なシリーズで難易度がバラバラの本を、あれこれ手当たり次第読んでいくことです。最初にどのシリーズが面白いかを捜すために様々な本を読んでみる場合もありますが、好みのシリーズが見つかったら、ある程度同じシリーズでレベルを上げながら読み進めていく方が効果的です。



(4)読書記録をつける(読書記録で自己の成長を確認)

多読を行う時には多読記録手帳を用いて必ず一冊読むごとに読書記録をつけて行きます。読めば読むほど冊数と語数が増えていく記録は、大きなモチベーションになります。1年間の読書状況を振り返ったり、以前に読んで難しいと感じた本を再度読んでみたりすれば、自分の英語力の伸びに気がつきます。そうなれば、授業の一環として読まされるのではなく自主的に読む様になってきます。単位を取るための義務的な苦痛の多読ではなく、楽しみながら学習者の英語力向上を目指す多読になります。


(5)指導者の多読(楽しみながらの教材研究)

多読指導者にとって一番大事なことは、指導者自らが多読を実践することです。学習者にどの本を勧めるか、どのようにレベルアップさせるか、躓いてる学習者にどのような助言をするか等々、指導者が多読図書に熟知していなければ指導が難しいでしょう。多読図書を読むのは他の授業での教材研究と同じことですが、違うのは、楽しみながら教材研究ができるということです。また、指導者自身の英語力が向上して他の英語の授業にも好影響を与えるという副産物もついてきます。






多読授業は周りから見れば、教師は授業中に何もせずに楽な指導法だと思われがちですが、従来の文法訳読(Grammar-translation) 方式の授業と比較すれば、数倍もの準備とエネルギーが必要なのです。如何に個人個人を伸ばしていくか、常に観察・研究をしていかなければなりません。また、教師主導ではなく学習者主導の授業なので、教師が教えるのでなくて、学習者自らが学んでいくものです。そのためには、学習者にやる気を起こさせなければなりません。そこに一番工夫が必要です。指導は大変ですが、それに見合うだけの成果は確実に上がります。
大量のインプットが自然なアウトプットに結びついていきます。学習者の英語運用能力を高めるために、我々指導者自身が思う存分楽しんで多読図書を読みましょう。


髙瀬敦子先生について

高校時代にAFS生としてアメリカ留学、日本の英語教育の欠陥に気付き、帰国後個人指導の授業に多読を導入。
テンプル大学院にて教育学博士号(TESOL)取得。著書「英語多読聴指導マニュアル」(大修館書店)。
梅花中学高校、大阪国際大学、関西大学、近畿大学、甲南大学等で多読指導を導入。
現在、関西学院大学非常勤講師、岩野英語塾にて小学生の多読指導、国際多読教育学会(ERF)理事、日本多読学会(JERA)理事


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