子どもにも学びが「見える」教え方

現代社会では、睡眠の質から車の運転の技術に至るまで、生活のありとあらゆる側面を確認することができます。学校もこの例外ではなく、保護者から学校経営者、政府までが児童の学習状況について多大な関心を寄せています。 生徒の学習進捗把握にこれまで以上の時間を割くことや報告書を書くこと、保護者を安心させることなど、多くの役割が期待され多忙を極める先生方も多いことでしょう。もちろん、上達を確認することは成功を讃えることに繋がり、ポジティブな効果があります。でも、私たちはこの中で最も大切な「子どもたち自身」を忘れていないでしょうか?

学習者のニーズに合わせた指導のその先へ

子どもの英語指導者は、学習者のニーズに応えることに秀でていますので、楽しめる要素—ゲームや歌やお話、課題に工作などが盛りだくさんの授業を計画します。だからこそ、いっそう子ども側は自分がどんなにたくさんのことを学んでいるのか、全く気づいていないということも珍しくありません。 「今日は何を学んだの?」と問いかけると、口を揃えて「別に何も」と答える子どもたち—そんな歯がゆい場面に心当たりのある先生も多いはずです。何も学んでいないわけがないのですから!文法、語彙、リーディング、ライティング、リスニング、スピーキングを教えていますし、子どもに言動を意識させ、手足や指先を動かすことも授業の一環です。学習ストラテジーやデジタルリテラシーを養い、さらに協働・自立作業の機会も与え、他にももっとたくさんのことを学んでいるはずなのです。 「別に何も」という答えではなく、生徒が「授業で何をしたのか」そのまま挙げられるように、やり方を工夫してみてはどうでしょうか。これは難しいどころか、関係者全員にとって有益なことでもあります。子ども自身が「学習過程に関わる」と、本人の達成するレベルも高まるという研究結果も出ています。ここでの「学習過程に関わる」とは、何を学習しているのか、どうやって学習しているのか、そして先生に期待されていることは何か、子どもが自覚することも含まれます。 「自覚」は、21世紀を生き抜く上で必要不可欠な能力の1つです。私たち教師にとっては、子どもが自身の学びに気づき、理解し、それを自ら口に出すよう促せば、保護者に対して子どもが遅れずついて行っていることを納得させられる、ということも大事なポイントです。 以上を踏まえて、子どもの英語クラスにおいて学びが「見える」ようになるためのコツをいくつかご紹介します。

1. レッスンメニューを使う

授業の始まりと終わりに、子どもたちに「レッスンメニュー」を見せ、これを使ってその日の授業について説明します。これを「Can-Do」項目の形で書くと、その日学習したことを子どもに意識させるのに特に効果的です。 「Can-Do」項目に対し、授業の始まりに子どもたちが「Yes」「No」(または親指を立てる/下げるなどの動作で示す)で答えてもらい、子どもが既に知っていることは何か、どこに知識の差があるのかを把握しましょう。そうすれば、生徒が本当に勉強する必要がある内容に貴重な授業時間を充てることができます。 そして、授業が終わるまでには、子どもたちは「Can-Do」項目のうちいくつかには「Yes」と答えられるようになっているはずです。生徒が「Yes」と答えない場合、次の授業の課題が何か、自ずとわかりますよね。 レッスンメニューは、子どもの関心を授業内容に向けることができますし、子どもに大いに安心感を与えます。授業の進度を把握することで、自分の学習に対する責任感と自主性が生まれるからです。 最後に、授業の終わりに何を学んだのかを話すことで、子どもたちは帰って保護者に今までよりもっと上手に同じ情報を伝えられるようになるという効果もあります。

2. 成功条件を示す

子どもの学習者は、アクティビティを終わらせるのに最短ルートを辿ろうとする傾向があります。1単語で答えたり、不完全な答えを言ったり、憶測で答えたり、これではアクティビティの効果が中途半端になってしまうことも多いでしょう。そこで役立つのが「成功条件」です。 「成功条件」とは、要は指示の延長です。アクティビティを成功させるのに何をすればいいのかをはっきりと示すもので、どんなタスクにも使えます。ここで、何を以って「成功」とするのか手本として見せる際に、生徒たちの助けも借りるようにできれば理想的です。 ハガキを書くというアクティビティであれば、見本となるハガキを見せて、どの要素が重要なのかを生徒たちに自分で考えさせるようにします。プレゼンテーションであれば、どんな例を見せるかを考えましょう。必ずしも良い例を見せる必要はありません。悪い例も、避けるべき行動は何かを教えるのには非常に効果的な場合もあります。 アクティビティの後で、生徒たちは自分の進捗を振り返ったり、2人組で評価し合ったりする際に「成功条件」を参考にします。先生側も、「成功条件」を元に、生徒にとって有意義な、詳しいフィードバックを与えることができます。

3. その都度、継続して評価する

生徒を評価するのに、学期の終わりまで待つ必要はありません。私たち教師は生徒を常に観察しています。気づいたことをその都度記録しておくことで、生徒の強みや努力が必要な部分について理解するにあたり鍵となる情報が得られるうえ、長期的には時間の節約にもなります。 子ども学習者の場合、言語面だけではなく、行動面や発達面での目標も意識しておく必要があります。例えば単独作業、グループ作業、独創的思考や批判的思考、ストレスへの対処などです。 褒めるべき時に褒めることは、子どものやる気を大きく刺激します。様々な条件を広く考慮すれば、どんな子どもでも、その子自身の学習の中で褒められるところがあるものです。ここで大事なのは、子ども一人一人を個別の人間として見ることです。そうすれば、子どもと子どもを比較してしまったり、意図せずに言語能力で順位を付けてしまったりといったことを避けられます。 こちらのチェックリストを、その都度生徒に評価を付け、継続して観察するのに使ってみてください: Continuous assessment checklist

以上、子どもを教えるにあたり、学びが「目に見える」ようにするアイデアをいくつかご紹介しました。 参考資料:
Hattie, J. (2012). Visible learning for teachers. Maximising impact on learning. Routledge.

About Amanda Davies

アマンダ・デイヴィス先生は児童英語教育アカデミックマネジメントでも長く経験を積んだ、経験豊富な教師、教師指導者、教材開発者、著者であり、編集者でもある。子ども英語教師の職能開発に熱心に関わっており、カンファレンスでの発表や、記事やブログの執筆、対面そしてオンラインでの教師研修を定期的に行なう。子どもの外国語学習プログラムを専門とする国際教育コンサルタントでもある。ポーランド在住で、英国、ロシア、スペイン、レバノン、エジプト、トルクメニスタンでの実績を持つ。IATEFL Young Learners and Teenagers Special Interest Groupの出版物編集者。

関連リンク

FacebookTwitter

テストが我々のカリキュラムにもたらした効果とは

本記事は2018年7月28日に東京で開催され『CAN-DOと4技能評価の英語教育について考える』セミナーにおけるMatt Saunders先生のプレゼンテーションを書き起こしたものです。

本校の現状 立命館アジア太平洋大学(APU)では、約6,000人の生徒が学んでおり、その内の半数が日本人生徒、それ以外は留学生であり、約89ヵ国からの留学生が学んでいます。様々な生徒たちが非常に興味深く混ざり合っています。APUでは、講義の基本言語として日本語または英語を選択することができます。日本語を基本言語に選択した生徒は一定の英語レベルを達成する必要があり、英語を基本言語に選択した生徒は一定の日本語レベルを達成しなければなりません。そのため、本校では非常に大規模な言語プログラムが提供されています。 英語プログラムには上級課程と標準課程の2種類があります。C1を目標として非常に高いB2レベル程度から開始される上級課程に入れる生徒は多くありません。標準課程は生徒のレベルに応じて0から開始され、B1以上を目標としています。標準課程には常時約1,200人の生徒が在籍しており、初級、準中級、中級、上級の4レベルに分かれています。 本校が抱える問題 大学ではすべての課程において、生徒に点数を付ける必要があります。本校の評価は「校内」で作成されていますが、外部の評価を利用して本校の生徒の学力と進捗状況を客観的に評価する方法も合わせて必要です。実際に求められているのは、実施が簡単で費用が高過ぎず、有効性と信頼性のある評価方法です。もちろん、APUは大学のパンフレットに生徒が信頼性のある試験で良い点数を出せるようになることを記載したいとも考えていました。そのために、本校ができることは何でしょうか? 試験と棒高跳び選手についての考察 本校における問題の解決策を紹介する前に、少し本題を離れて試験の一般的な重要性についてお話しましょう。私は、概して試験とは私たちの生活の普遍的な機能となっている点で非常に重要なのではないかと思っています。私たちは常に人々や物事を評価しています。視力検査、血液検査、運転試験など、様々な試験があります。試験とは新しい現象ではなく、社会規範の発祥と同様の長い歴史を持ち、勇敢さを試すための試験や成人するための試験などに遡ることができます。 そして、私たちは誰でも試験の作成者でもあります。私たちは常に人々を評価しています。 私たちはあらゆる種類の交流を通して人々を評価しています。例えば、ただの会話の中でも、あなたは話し相手が会話のトピックにどの位精通しているか評価しているかもしれませんし、相手の英語能力や日本語で会話が可能か、などの小さな事柄まで評価しているかもしれません。このように、あなたは始終物事を評価しているのです。読書をしている時も本の内容について同意できるか、同意できないか批判的思考を巡らせているでしょうし、これ以上時間をかけて読み続ける価値がある本なのかと考えながら読み進めているでしょう。 ですが、私が試験について考える上で一番重要だと思うことは、試験とは推測を可能にするためのものだということです。私たちは現実の世界において人がどのように行動するかを推測するために試験を行います。ですから、私たちは例えば、英会話能力試験などを行って、次のような推測をするのです: 実際の状況において受験者が試験結果と同等の言語スキルを使用したとしたら、受験者はいかに会話を成功させることができるか?私たちが求めているのは、受験者が現実世界でスキルを実践した場合に発揮される能力を私たちが(そして受験者自身も)理解するのを助けてくれる試験なのです。 現実世界でのパフォーマンスを考慮に入れることは重要です。棒高跳びの選手に対する試験を想像してみてください。良い棒高跳びの選手になるには、棒を持って非常に速く走らなければなりません。でも、走るスピードだけに注目したらどうなると思いますか?とても速く走ることができる選手がたくさんいて、その中から最も足の速い二人を選び、彼らが最高の棒高跳びの選手になるはずだと予想したとします––でも、彼らがバーを飛び越えることができるのかは誰も確認していません。確認したのは走る速さだけです。その場合、私たちはこの2人の素晴らしいアスリートを選び、「この2人が世界最高の棒高跳びの選手ですよ。世界で最も足の速い2人です。」とオリンピック委員会に推薦することになってしまうでしょう。でも、残念なことに、この2人の選手がバーを飛び越えることができるのかは実際に誰も確認していません。この場合、競技の技量を正しく推測をするために必要な確認方法を持ち合わせていなかったことになります。つまり、限られた種類のスキルだけを試験して生徒の全体的な能力として報告してしまえば、それは、まるで棒高跳びの選手の全力疾走のスピードにだけ目を向けて、選手がバーを飛び越えることができるのかを理解しようとするようなものなのです。 ここで、2つ目の重要な問題が見えてきます: もし選手が走るスピードだけを試験されると知っていたとしたら、選手はバランスと体幹の強化や棒の練習をやめてしまうかもしれません。コーチも選手が選抜されるために必要なのは速く走れるようにすることだけだと知っています。それでは、棒高跳びを英語に置き換えてみましょう。もし生徒が読解と文法だけ試験されていれば、生徒は他の分野を一生懸命勉強しなくなります。教師も不本意であったとしても、生徒が試験で良い点数をとれるように試験の対象となるスキルにのみ集中して指導するようになり、試験の対象範囲が一つの分野に限定されているのならば、その分野の中で良い成績を出せるよう生徒を促すようになるでしょう。しかし、全体像を見るのであれば、リスニングと読解の試験だけでなく、それ以外のスキルも試験すべきです。 問題解決 ついに、本題に戻りましょう。本校が採用した試験とは?APUにとってはGlobal Scale of Englishの導入、そして「Placement Speaking」「Progress」 が素晴らしい解決策となりました。「Progress」テストはコンピューターベースの試験です。この試験では4つのスキルに加え、文法と語彙が評価されます。本校では、リスニング、文法、語彙、読解のみを評価する他の試験を使用していましたが、約2時間半もかかる上に、生徒のスキルの完全な全体像を把握することができずにいたため、本校が知りたかったすべてのスキルを試験することができる「Progress」に切り替えました。受験料も安くなりました。より徹底した評価を得ることができ、受験時間も大幅に短縮されました。 もう一つの大きな違いは、以前の試験では受験対策のために分厚いテキストを使ってリスニングや文法の練習をするために、ライティングや英会話を練習するための時間が奪われていました。「Progress」はより多くのスキルを網羅しているため、それらのスキルにも時間をかけて勉強することができ、大学のアドミニストレーターも生徒のスコア上昇に満足することができます。ライティングと英会話に時間をかけながらも、生徒のすべてのスコアが大幅に向上するので、非常に良い結果が出ています。 生徒の反応 「Progress」テストを採用することで、生徒が目覚めて、積極的に取り組むようになりました。これは、問題が非常に多岐に渡っており、数多くのスキルが試験されているからだと私は考えています。生徒全員が顔を上げてテストのために勉強しているのを見るのは本当に新鮮で素晴らしいことです!生徒自身もテストに価値を見出しています: 私は生徒に「Progressを受験するために何をすべきか?どうすれば良い結果を出せるか?」を後輩にアドバイスするための手紙を書いてもらいました。私が想像していた以上に生徒たちはたくさんのアドバイスを書いてくれました。その中でほぼ全員の生徒が書いていたアドバイスを一つ紹介するとすれば、「一生懸命勉強すること」でしょう。 本校では生徒たちに「一生懸命勉強しなさい!」といつも言っています。しかし、生徒同士がそれを言い合うことはあまりありません。ですから、この変化はテストによって生徒の受験へのモチベーションが向上したことを示唆しており、一生懸命勉強すれば必ず身になると生徒に感じさせることができるテストであると考えているのです。だからこそ、私はモチベーションの真の向上が「Progress」の素晴らしい点だと思うのです。 結論 APUではスコアが上昇しています。「Progress」は間隔を置かず、頻繁に受験しても結果に大きな変化が見られないタイプの試験です。しかし、1学期、2学期と続けることでスコアが大きく向上するのを見てきました。あなたもその変化を必ず見ることができるはずです。

著者について

Matt Saunders先生は日本の立命館アジア太平洋大学で特任講師を務めています。カナダ出身で、2000年から日本で英語を指導しています。2012年にメルボルン大学で応用言語学(TESOL)修士号を取得した後、エクステンシブリスニングや言語力評価試験に強い関心を持ち、英語教授法が抱える問題に取り組んでいます。

関連リンク

FacebookTwitter

子どもたちのモチベーションを維持し、自信を持たせる5つのコツ

児童英語教師が子どもたちにつけてあげられる力、「教えてあげられる」ことは何でしょうか。単語でしょうか? 文法でしょうか? もちろんこれらも大事なのですが、これからずっと続く英語学習に対するモチベーションを芽生えさせ、育み、自ら学ぶことのできる子どもに育てるにはどうしたらいいのでしょうか。

1. 子どもたち同士の学び合い—Active learning

だいたいどの学校も教室も初級・中級、または学年でレベル分けをされていると思います。けれども、その分けたクラスの中にもさらにレベルの差や違いがあります。「どのクラスもmixed-levelである」という現実に立ち、どうやってその差や違いを活かし、子どもたちが学び合い、伸ばし合える授業づくりができるのか—それが教師の課題です。 教室内で何か課題を与えると、必ず早く終わる生徒、時間がかかる生徒など個人差が出てきます。先に終わってしまう生徒は、最初はすぐに答えを言ってしまい、友達をうまく助けることができません。挙げ句の果てには私に、“Don’t say the answer!” と怒られてしまうこともあります。そんな生徒も、だんだんと友達を上手にサポートできるようになっていきます。 メル・シルバーマンという心理学者はActive Learning Credoの中で、学びについてこう述べています:

What I teach to another, I master.
 かの有名なLearning Pyramid モデルでも、「他の人に教える時、最も学習内容が定着する」と言われています。 あるレッスンで、二人で一冊の絵本を音読するという課題を与えた時のことです。「わかんない!」を連発していた男の子とペアになった女の子は、自分は読めるけれど、その男の子に対して「読んであげる」のではなく、ただ寄り添い、「ほら、これ前のページに出てきた単語と同じだよ」と教えてあげながら、必要な時は指差して促すことでその男の子が自分で読めるように手助けしてくれました。まさに“little teacher”です。そして、レッスンの後半、この「わかんないboy」が「読める男」に変身したのです。私の教室では、こんな感動の場面が日々見られます。子どもたちには、「わたし、ぼくにもできる!」と思わせてくれる教師、友達が必要なのです。 私の生徒たちは「ぼくもたくさんワークブック進めてくるぞ!」「私もあんな風に絵本を音読できるようになりたいな」「私も英語日記書いてみよう!」という風に、日々学び合い、伸ばし合っています。

2. Self-Efficacy(自己効力感)

私は、先にself-efficacyという言葉を知って、それを目指してきたわけではありません。2017年つくばで開催されたJALT(全国語学教育学会)で何度か耳にしましたが、最初は意味を知りませんでした。調べてみると、なんと! 私が長年大事にしてきたことだったのです。今では自分の教え方や目指すもの、教室で起こっていることにself-efficacy=自己効力感という言葉がぴったりだと実感しています。 「自己効力感」とは、ある課題に対して自分がどれだけできそうかと感じる気持ちです。自己効力感の高め方には4つあります。小さな成功体験を重ねること、自己効力感が高い人をお手本として観察すること、自己効力感が高まる言葉をかけてもらうこと、自己効力感が高まる状況に身を置くことで、やればできる!という自分への信頼、自信が身につくのだそうです。 例えばこんなシーンです。CDをかけるとすぐに歌いだすTくんに、Yくんが「英語の歌を一回で覚えられちゃうなんてすごい才能だね」と声をかけてくれます。これが「自己効力感の高まる言葉」です。また、レッスン中なかなか声の出ないNちゃんが、良く発言するTくんにくっついて、Tくんの話す英語に耳を傾け、自信をもらい、次のレッスンには家でCDをたくさん聴いて、スラスラ言えるようにしてきてくれます。Nちゃんにとっては「自己効力感の高いTくんをお手本とし」て自分の自己効力感を高めた瞬間であると同時に、Tくんにとっては「自己効力感の高まる状況」でもあったのです。

3. 予習能力を育む

ある新聞記事で、百マス計算でおなじみの陰山先生がアクティブ・ラーニングにおける「予習能力」の大切さについてお話しされていました。私の教室では生徒のほとんどが、ワークブック、テキスト、プリントなど各自取り組んでいるものを、進めたいだけ進めてきた状態でレッスンに参加します。「反転教室」「反転学習」においては、生徒は教室で初めて何かを習うというより、CDを聴いたり、テキストに目を通して予習をしてからレッスンに臨みます。それを教師やクラスメイトが引き出し、刺激し合ってさらに高めていく。そういうスタイルです。 私はレッスン中、子どもたちが家で頑張ってきたワークに目を通しながら、「うわっ、こんなにやってきてくれたの!すごい」「毎日やったの!えらいね!」と声をかけています。頑張った子はその日自然とリーダーになります。「何にもやってない」と自分を過小評価して言う生徒が時々いますが、Student Bookの中のCDが抜きとられていたら「ほらね!家でCD聴いてくれてるじゃない」とコメントします。もし家で何もやってこない生徒がいれば、「何か」やってきてくれるよう励まし、何かやってきてくれた時にはたくさんほめるようにしています。 こうしたやりとりから、子どもたちに「家で頑張ると何かいいことがあるぞ」と思ってもらいたいと思っています。

4. Formative Assessment(形成的評価)の力

学習の評価には大きく分けて、「formative assessment(形成的評価)」と「summative assessment (総括的評価)」とがあります。一見、活発で良くできていそうな生徒がテストをするとできないことがありますが、英語そのものを理解していないというよりも、「指示をきちんと聞く、読み解く」とういう訓練が身に付いていないだけの場合もあるので、そういうテストももちろん大事です。一方で、日々のレッスンの中で行えるのがformative assessmentです。つまり「よし、今から評価するぞ」と固く構えて形式的に評価するのではなく、日々のレッスンでまず子どもたちのいいところ、伸びに注目し、それを口頭で伝えていくという評価方法です。 最近の教材にはCan-Do評価を生徒自身ができるような工夫がなされていますので、そういう項目も活用することで、生徒自身も「私は○○できるようになった」と自己評価する機会が得られます。私からは、「すごいね、ここ全問正解!」「何度もやったからdoesはばっちりだね」など単元やターゲットとなる文法についての理解度を評価して伝えます。 私の教室に来る生徒はほとんどが保護者の送迎で通ってきているので、毎回保護者の方が教室にいらっしゃいます。この状況を活かし、私が教室開校当初から行なっていることが一つあります。保護者の方を全員教室に招き入れ、その日の子どもたちの様子を10分〜20分程度でお話ししています。そこではこんなフィードバックをします。「○○くん、今週はたくさん家で課題をやってきてくれましたね。It’s/It isn’tの違いも良く聴き取れています。お父さんも勉強を見て下さっているとのことで、ありがとうございます! 前よりも丁寧に書けるようになっていて、単語と単語の間のスペースができてきました。私が他の生徒を見ている間に、間違いを自分一人で直してくれていました。」このように、ただ良くできていたと漠然と伝えるのではなく、できるだけ具体的に、そして気持ちも添えてコメントするのです。そのために、レッスン中、子どもたちが輝く瞬間、発話を心にとめて、保護者の方や子ども本人にその場で、その日に伝えるように心がけています。お会いできない保護者の方とはメールや連絡ノートも活用しています。 formative assessmentは、教師が一方的に一回で与えるテストとは違い、時間をかけて生徒たちと作り上げていくものです。教師は、生徒とのやりとりを通して、生徒が今できていることやこれからの課題を見つけて提案し、本人の興味を引き出します。この作業自体が、教師自身の教え方についても振り返りの機会となり、レッスンをより良くしていくことにつながるのです。

5. ピグマリオン効果と英語教授

親や教師、周囲の人が「あなたは素晴らしいよ、成績が伸びるよ」と期待を持って接すると実際に成果が出るという現象を「ピグマリオン効果」というそうです。私も「CD聞きなさい! さもないと」とプレッシャーを与えるのではなく「頼むね。CD聴いてきてね!」と声がけします。「毎日やりなさい!」ではなく「全部で15分ぐらいしかかからないはず、頑張って」「やらなきゃだめ!」ではなく「やってきてくれたら嬉しい!」という風に声がけしています。 私の教室ではピグマリオン効果ならぬ「Mちゃん効果」(Mちゃんの頑張りに刺激されてうちの子も頑張っています、の意)など、保護者の方たちがネーミングした様々な効果も見られています。お友達の素晴らしいところを素晴らしいと認めてほめる保護者と、それに応えて伸びていける素直な生徒たちは本当に素晴らしいです。学校、教室でそういったあたたかい雰囲気ができていると、子どもたちの自己効力感が高まり、子どもたちのモチベーション、自信も必ずや高まっていくと思います。

さいごに

私たち英語教師が同じ生徒と関われるのはほんの短い間です。小さい頃にこういった自己効力感が育てば、どんな課題にも対応できるようになり、中学校、高校、大学、社会に出てどんな場に置かれても、自ら課題を見つけ、学んでいけると私は信じています。

清野明子先生について

早稲田大学卒業後、コロンビア大学ティーチャーズカレッジで英語教授法修士号を取得。成城学園初等学校、武蔵中学校・高等学校で講師として従事した後、長野県松本市へ転居。自身の英語教室で幼稚園児から小学6年生を指導して10年以上になる。グループで学習するダイナミックさと個々のニーズに答えた学習を融合させた、現代版「寺子屋」スタイルでの教育に従事。塩尻市教育委員会のティーチャー・トレーナーや、ベネッセのワールドワイド・キッズのスーパーバイザーを務めた経験をもつ。「English Land」の共著者。

関連リンク

English Land 2nd Edition
English Land – “Ask Akiko” Forum
FacebookTwitter