子どもたちのモチベーションを維持し、自信を持たせる5つのコツ

児童英語教師が子どもたちにつけてあげられる力、「教えてあげられる」ことは何でしょうか。単語でしょうか? 文法でしょうか? もちろんこれらも大事なのですが、これからずっと続く英語学習に対するモチベーションを芽生えさせ、育み、自ら学ぶことのできる子どもに育てるにはどうしたらいいのでしょうか。

1. 子どもたち同士の学び合い—Active learning

だいたいどの学校も教室も初級・中級、または学年でレベル分けをされていると思います。けれども、その分けたクラスの中にもさらにレベルの差や違いがあります。「どのクラスもmixed-levelである」という現実に立ち、どうやってその差や違いを活かし、子どもたちが学び合い、伸ばし合える授業づくりができるのか—それが教師の課題です。 教室内で何か課題を与えると、必ず早く終わる生徒、時間がかかる生徒など個人差が出てきます。先に終わってしまう生徒は、最初はすぐに答えを言ってしまい、友達をうまく助けることができません。挙げ句の果てには私に、“Don’t say the answer!” と怒られてしまうこともあります。そんな生徒も、だんだんと友達を上手にサポートできるようになっていきます。 メル・シルバーマンという心理学者はActive Learning Credoの中で、学びについてこう述べています:

What I teach to another, I master.
 かの有名なLearning Pyramid モデルでも、「他の人に教える時、最も学習内容が定着する」と言われています。 あるレッスンで、二人で一冊の絵本を音読するという課題を与えた時のことです。「わかんない!」を連発していた男の子とペアになった女の子は、自分は読めるけれど、その男の子に対して「読んであげる」のではなく、ただ寄り添い、「ほら、これ前のページに出てきた単語と同じだよ」と教えてあげながら、必要な時は指差して促すことでその男の子が自分で読めるように手助けしてくれました。まさに“little teacher”です。そして、レッスンの後半、この「わかんないboy」が「読める男」に変身したのです。私の教室では、こんな感動の場面が日々見られます。子どもたちには、「わたし、ぼくにもできる!」と思わせてくれる教師、友達が必要なのです。 私の生徒たちは「ぼくもたくさんワークブック進めてくるぞ!」「私もあんな風に絵本を音読できるようになりたいな」「私も英語日記書いてみよう!」という風に、日々学び合い、伸ばし合っています。

2. Self-Efficacy(自己効力感)

私は、先にself-efficacyという言葉を知って、それを目指してきたわけではありません。2017年つくばで開催されたJALT(全国語学教育学会)で何度か耳にしましたが、最初は意味を知りませんでした。調べてみると、なんと! 私が長年大事にしてきたことだったのです。今では自分の教え方や目指すもの、教室で起こっていることにself-efficacy=自己効力感という言葉がぴったりだと実感しています。 「自己効力感」とは、ある課題に対して自分がどれだけできそうかと感じる気持ちです。自己効力感の高め方には4つあります。小さな成功体験を重ねること、自己効力感が高い人をお手本として観察すること、自己効力感が高まる言葉をかけてもらうこと、自己効力感が高まる状況に身を置くことで、やればできる!という自分への信頼、自信が身につくのだそうです。 例えばこんなシーンです。CDをかけるとすぐに歌いだすTくんに、Yくんが「英語の歌を一回で覚えられちゃうなんてすごい才能だね」と声をかけてくれます。これが「自己効力感の高まる言葉」です。また、レッスン中なかなか声の出ないNちゃんが、良く発言するTくんにくっついて、Tくんの話す英語に耳を傾け、自信をもらい、次のレッスンには家でCDをたくさん聴いて、スラスラ言えるようにしてきてくれます。Nちゃんにとっては「自己効力感の高いTくんをお手本とし」て自分の自己効力感を高めた瞬間であると同時に、Tくんにとっては「自己効力感の高まる状況」でもあったのです。

3. 予習能力を育む

ある新聞記事で、百マス計算でおなじみの陰山先生がアクティブ・ラーニングにおける「予習能力」の大切さについてお話しされていました。私の教室では生徒のほとんどが、ワークブック、テキスト、プリントなど各自取り組んでいるものを、進めたいだけ進めてきた状態でレッスンに参加します。「反転教室」「反転学習」においては、生徒は教室で初めて何かを習うというより、CDを聴いたり、テキストに目を通して予習をしてからレッスンに臨みます。それを教師やクラスメイトが引き出し、刺激し合ってさらに高めていく。そういうスタイルです。 私はレッスン中、子どもたちが家で頑張ってきたワークに目を通しながら、「うわっ、こんなにやってきてくれたの!すごい」「毎日やったの!えらいね!」と声をかけています。頑張った子はその日自然とリーダーになります。「何にもやってない」と自分を過小評価して言う生徒が時々いますが、Student Bookの中のCDが抜きとられていたら「ほらね!家でCD聴いてくれてるじゃない」とコメントします。もし家で何もやってこない生徒がいれば、「何か」やってきてくれるよう励まし、何かやってきてくれた時にはたくさんほめるようにしています。 こうしたやりとりから、子どもたちに「家で頑張ると何かいいことがあるぞ」と思ってもらいたいと思っています。

4. Formative Assessment(形成的評価)の力

学習の評価には大きく分けて、「formative assessment(形成的評価)」と「summative assessment (総括的評価)」とがあります。一見、活発で良くできていそうな生徒がテストをするとできないことがありますが、英語そのものを理解していないというよりも、「指示をきちんと聞く、読み解く」とういう訓練が身に付いていないだけの場合もあるので、そういうテストももちろん大事です。一方で、日々のレッスンの中で行えるのがformative assessmentです。つまり「よし、今から評価するぞ」と固く構えて形式的に評価するのではなく、日々のレッスンでまず子どもたちのいいところ、伸びに注目し、それを口頭で伝えていくという評価方法です。 最近の教材にはCan-Do評価を生徒自身ができるような工夫がなされていますので、そういう項目も活用することで、生徒自身も「私は○○できるようになった」と自己評価する機会が得られます。私からは、「すごいね、ここ全問正解!」「何度もやったからdoesはばっちりだね」など単元やターゲットとなる文法についての理解度を評価して伝えます。 私の教室に来る生徒はほとんどが保護者の送迎で通ってきているので、毎回保護者の方が教室にいらっしゃいます。この状況を活かし、私が教室開校当初から行なっていることが一つあります。保護者の方を全員教室に招き入れ、その日の子どもたちの様子を10分〜20分程度でお話ししています。そこではこんなフィードバックをします。「○○くん、今週はたくさん家で課題をやってきてくれましたね。It’s/It isn’tの違いも良く聴き取れています。お父さんも勉強を見て下さっているとのことで、ありがとうございます! 前よりも丁寧に書けるようになっていて、単語と単語の間のスペースができてきました。私が他の生徒を見ている間に、間違いを自分一人で直してくれていました。」このように、ただ良くできていたと漠然と伝えるのではなく、できるだけ具体的に、そして気持ちも添えてコメントするのです。そのために、レッスン中、子どもたちが輝く瞬間、発話を心にとめて、保護者の方や子ども本人にその場で、その日に伝えるように心がけています。お会いできない保護者の方とはメールや連絡ノートも活用しています。 formative assessmentは、教師が一方的に一回で与えるテストとは違い、時間をかけて生徒たちと作り上げていくものです。教師は、生徒とのやりとりを通して、生徒が今できていることやこれからの課題を見つけて提案し、本人の興味を引き出します。この作業自体が、教師自身の教え方についても振り返りの機会となり、レッスンをより良くしていくことにつながるのです。

5. ピグマリオン効果と英語教授

親や教師、周囲の人が「あなたは素晴らしいよ、成績が伸びるよ」と期待を持って接すると実際に成果が出るという現象を「ピグマリオン効果」というそうです。私も「CD聞きなさい! さもないと」とプレッシャーを与えるのではなく「頼むね。CD聴いてきてね!」と声がけします。「毎日やりなさい!」ではなく「全部で15分ぐらいしかかからないはず、頑張って」「やらなきゃだめ!」ではなく「やってきてくれたら嬉しい!」という風に声がけしています。 私の教室ではピグマリオン効果ならぬ「Mちゃん効果」(Mちゃんの頑張りに刺激されてうちの子も頑張っています、の意)など、保護者の方たちがネーミングした様々な効果も見られています。お友達の素晴らしいところを素晴らしいと認めてほめる保護者と、それに応えて伸びていける素直な生徒たちは本当に素晴らしいです。学校、教室でそういったあたたかい雰囲気ができていると、子どもたちの自己効力感が高まり、子どもたちのモチベーション、自信も必ずや高まっていくと思います。

さいごに

私たち英語教師が同じ生徒と関われるのはほんの短い間です。小さい頃にこういった自己効力感が育てば、どんな課題にも対応できるようになり、中学校、高校、大学、社会に出てどんな場に置かれても、自ら課題を見つけ、学んでいけると私は信じています。

清野明子先生について

早稲田大学卒業後、コロンビア大学ティーチャーズカレッジで英語教授法修士号を取得。成城学園初等学校、武蔵中学校・高等学校で講師として従事した後、長野県松本市へ転居。自身の英語教室で幼稚園児から小学6年生を指導して10年以上になる。グループで学習するダイナミックさと個々のニーズに答えた学習を融合させた、現代版「寺子屋」スタイルでの教育に従事。塩尻市教育委員会のティーチャー・トレーナーや、ベネッセのワールドワイド・キッズのスーパーバイザーを務めた経験をもつ。「English Land」の共著者。

関連リンク

English Land 2nd Edition
English Land – “Ask Akiko” Forum
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Nurturing 21st Century Skills – 21世紀スキルの教え方


「21世紀の学習者が将来成功していくためには特定のスキルが必要不可欠である」̶– この考え方は別段新しいものではありません。甲南女子大学で児童英語教育を教えるアン・マエダ准教授によると、事実、子どもたちは教室に来る時点で、すでに熱意に溢れています。しかし子どもが本能的に求めている「協働」「コミュニケーション」「批判的思考」「独創性」を、教材の内容を「教え込もう」と焦るばかりに、時として教師が殺してしまうことがあります。今回、アン准教授から若年学習者との関わり方についての見解をいくつか共有していただきました。 21世紀スキルを見極め、育てるには 21世紀に入って労働の形態は劇的に変化しました。社会人を取り囲む環境は様変わりし、企業が従業員に求めているものも以前とは同じでは ありません。これは日本だけでなく、世界中で起きている現実です。ピアソンをはじめ、教育事業が21世紀スキルを教材の中心に据えてきたのにはもっともな理由があります。21世紀の社会で成功を収めるための基盤は、学校の内外で起こる学びが築くものなのです。 アクティブ・ラーニングとは? 21世紀スキルの4つの柱、「協働」「コミュニケーション」「批判的思考」「独創性」のすべてに共通するのが、生徒の参加です。コミュニケーションであれ、協働作業であれ、批判的思考であれ、独創性であれ、4つ全部が混じっている場合であれ、そこでは必ず生徒が「アクティブ」つまり能動的に参加しているのです。 「アクティブ・ラーニング」と言えば、デジタルツールが必要だと思われがちですが、それは誤りです。「アクティブ・ラーニング」が教え方として注目を集め始めた時、デジタル媒体を利用して実施されることが多かったため、このような誤解が生まれたのでしょう。 これもまた誤解が多いのですが、「アクティブ・ラーニング」は「体を動かすこと」でもありません。また、アクティブ・ラーニングを実施しているクラスではペア・グループ学習が多いとはいえ、それだけに限りません。ここでの「アクティブ(能動的)」とは、学習者の役目が受動的ではないと言う意味に過ぎないのです。自分一人で考えていたり、提示された文に対する答えを作り出したり、別の生徒と2人で問題解決をしたり、グループの中で情報を評価し順番に並べたりなど、参加の形は様々です。どの場合も、教師が作ったきっかけに生徒が何らかの形で参加しているわけですが、必ずしも目に見える形で表れていないだけなのです。 とはいえ、1名~少数の、多くの場合外向的な生徒の独壇場になっている授業も未だによく見られます。教師がそれ以外の生徒たちの発言も促し、取り残される生徒がいないよう心がけることが非常に重要です。そのためには、生徒の配置を工夫したり、再配置したり、他にも場の空気を変える方法を取ったり、一人一人がどれだけ意欲的に取り組んでいるか、逆に上の空になっていないか、絶えず目を配ったりする必要性が出てきます。 子どもは準備万端でやって来る 子どもたちは準備万端でやって来ます。子どもとは本来、協働し、コミュニケーションをとり、考え、創造したがるものです。これを抑制するのではなく発展させるのには、ちょっとしたコツがあります。1つが、子どもが自分で答えを見つけるように促すことです。 しかし未だに、授業では新出事項を手取り足取り教えてあげてしまう傾向が根強くあります。例えば、子どもの思考にスイッチが入っていない状態で新出語彙を教えてしまうと、単語をただ聞こえたまま繰り返すオウムと同じことになってしまいます。音を声として出してはいるものの、それは教師が材料を与えているからに過ぎません。教師が情報をすべて与え、それを生徒が再現することで応えているだけなのです。 生徒が知りたがっているからというだけで答えを与えてはいけません。「教える」前に「問いかける」など、いつものやり方を少し変えるだけでいいのです。それだけで指導プロセス、そして学習プロセスにどれだけ大きな違いが生まれるか、驚かされることでしょう。 ドリルを崩す 本物のコミュニケーションは、生徒たちが自分の使っている言葉を理解してこそ実現します。ここでの「言葉」とはフラッシュカードを見せるなどして教師が台本を提供し、声に出して読んでみせたのを生徒が繰り返す、というようなやり方で教える側が満足してしまっているような教室で飛び交う「言葉」とはは大きく異なります。 もちろん、本物のコミュニケーションはもっとずっとダイナミックです。英語に限らず、どんな言語を学んでいても、コミュニケーションというものは言われたことをオウム返しにすることであると信じ込まされてきた生徒は、実世界でコミュニケーションをとる機会が訪れた際にびっくりしてしまうことでしょう。 本物のスピーキングを促すために教師ができること フラッシュカードが8枚あって、生徒たちはそのうち6~7の単語を既に知っている、としましょう。そういった状況で、予め意味を教えずに2~3語を新しく追加してみると面白いかもしれません。新しい単語が出てきた時、あえて「これは何?」と問いかけてみましょう。 「わかりません」という返事が返ってくるかもしれませんが、すぐに答えを与えてはいけません。あえて、そこは飛ばして授業を続けましょう。すると、しばらくして「これは何?」と言う子が出てきます。それが、答えを見つける唯一の方法だからです。まもなく生徒は、注意を傾けて新しい単語を憶えようとするだけでなく、助けを求める方法もあるのだと理解するでしょう。教師は、そういう現象が起こるまで根気良く待たなければなりません。進んで自ら答えを探す力は、英語の授業よりもずっと大きな世界で活かせる「生きるためのスキル」なのです。

アン マエダ氏のご紹介

甲南女子大学准教授。20年以上にわたって児童教育に従事してきている。甲南女子大学では児童英語教員養成プログラムで講師兼プログラムコーディネーターを、大阪府と奈良県では数々の公立小学校で教師育成を行い、相談役も務める。ピアソンのDiscovery Islandシリーズ顧問委員会の一員でもある。児童や青少年を主な対象に、学習者の自律、動機付け、発達に深く関心を持ち、現在進行中の研究ではネパールを訪れ、現地の教師・学校と協力し、多読プログラムを実施している。

関連リンク

Materials to support 21st century skills development

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