English Firsthand をオンライン授業に使う3つのコツ

オンライン授業への移行が進むなかで、複雑な心境の先生もいらっしゃるかもしれません。オンラインの授業は教室での授業よりもシンプルにせざるをえず、内容が淡白になりすぎて生徒が急速にやる気を失ってしまうのではないか、と。やる気を引き出す授業を作り上げるためには、どんな環境であっても何かしらの障害が発生するものですが、具体的な手順を踏むことで、生徒を惹きつけるコミュニカティブなオンライン授業にしていくことも可能です。

具体的にはどうすればいいのか、この記事ではコツを3つにまとめて紹介します。
以上の「コツ」はEnglish Firsthandシリーズの利用を想定して書かれていますが、アドバイスの内容自体はこのシリーズ以外のコンテンツにも応用できます。



オンライン授業やオンライン学習について複雑な感情をお持ちの先生は少なくないでしょう。私も例外ではありません。私の場合、包括的なオンラインコースを作るということは事前に膨大な計画と準備を要するのにもかかわらずかけた労力に対してほとんどの生徒が得られる恩恵はごくわずかなのではないか、というジレンマを感じています。比べると、「普通」の、教室での授業や学習は、インタラクティブな過程です。規定のテキストとカリキュラムがあったとしても、コースを進めながら、コンテンツの取り扱い方や学習評価について、教師と生徒の双方から、場合によっては「交渉」と言っても差し支えない、細かな調整が随時発生します。

オンライン学習に対して複雑な気持ちになるのは、準備のジレンマだけが理由ではありません。オンラインで可能な交流のかたちも問題なのです。先生方のほとんどがそうだと思いますが、私の教師としてのキャリアのなかで一番のポジティブな経験は、教室のなかで起こった、生徒たちとの交流だからです。自分が教えたことが生徒の人生にどんなふうに影響していくのかを、間近で、この目で見ることができたからこそ、なのです。「オンライン授業」と言われると、教室でのリアルな授業から生まれる喜びが薄まったようなやりがいしか感じられないような印象を持ってしまいます。

しかし、教えることと学ぶことを取り巻く環境というのは常に変化していくものですし、今回のパンデミックが始まる前からでさえ、そういうものだったわけですから、私たち教師はどちらにしろ教え方のレパートリーを広げていく必要があると言っても差し支えないでしょう。効果的で、時に喜びに満ちた指導や学習が、オンラインでの交流を通じて起きてもおかしくないですし、今後、起きていくでしょう。それが現実であり、私たちは受け入れていくしかありません。

English Firsthand シリーズが生まれた25年前からシリーズエディターとしてコースに関わってきた私が自信を持って言えるのは、初版から5版までのどれもが、テクノロジー、コミュニカティブ言語教授法、文化といった、教育業界の移り変わりに応じた進化を遂げてきた、ということです。ですから、この時勢で起きていることを、新たな進化を求められる新たな変化であると捉えれば、状況に適応するだけにとどまらず、 成功につなげることも可能だと思います。そのためには、前向きな姿勢を保つこと、すなわち教育面の成果に目を向けることが肝心です。

この記事では、English Firsthand シリーズをオンラインで教えるための3つのコツをご紹介しますが、このシリーズ以外で、コミュニカティブな学習を中心に据えたコンテンツや教授法にも応用できます。


その1: ポジティブな「クラス文化」を作る

教師とは、クラスを導くリーダーです。リーダーとは、意識している、していないにかかわらず、自らが率いるクラスの「文化」を作る人間でもあります。これは会社や家庭にも同じことが当てはまります。「クラス文化」とは、そのクラスの根本に流れる価値観や姿勢のことを指します。ご自分のクラスの文化をどういうものにしようか決断していくなかで、成果につながる、楽しめる雰囲気を作り上げ、お互いを尊重する姿勢を導き、明確な方針を維持していくことが可能です。クラス文化には、生徒同士にお互いを意識させ、ポジティブな学習環境を持続させる効果もあります。それだけでなく、活発なクラス文化は「成長志向」を育み、クラスの一体感や、コミュニケーションと相互協力と助け合いを通じてみんなで成功を目指すという考え方を浸透させるのです。

こんなふうに書くと、なんだか大層な取り組みだ、責任重大だと思う方もいらっしゃるでしょう。確かにそうですし、むしろ達成不可能に感じるかもしれません。それが、可能なのです。

教えるという場には、必ず「不可能な難題」がつきまといます。初めて教鞭をとった時の私は未熟な21歳で、Peace Corpsのプログラムで西アフリカにあるトーゴの首都ロメの高校に派遣されたばかりでした。1日5つのクラスを持たされ、80〜100人規模の野外教室で教えなければなりません。テキストさえなく、当然ながら環境はアナログで、電気さえ通っていなかったのです。

状況だけ聞けば、当然「不可能」と言いたくなりますが、「ポジティブなクラス文化」(当時はそんな呼び名もありませんでしたが)を作り上げるにはどうすればいいかを教えてくれた教官のヒントや研修の甲斐あって、ポジティブな指導環境を生み出すことができました。すると生徒はすぐに反応してくれました。ほとんどの生徒が賛同を示してくれ、相互協力し、助け合いながら学習するようになりました。もちろん私自身も、前向きな姿勢を保ち、良い結果に目を向け続け、新しいアイデアを生徒と試していけるよう、毎日自分で自分に暗示をかける必要がありました。というのも、ただ何となく出席を取り、ルールを守らせ、ドリルをやらせ、板書した内容を丸暗記させてテストし、成績をつけるだけ...と、教師というより授業監督のようなやり方をついしてしまいそうになる日もあったからです。クラス文化がなければ、惰性で仕事をしてしまっていたかもしれません。

私からのアドバイスをまとめると、成長志向でもって、ポジティブなクラス文化の構築に集中すること、クラス文化を築くため、毎日一歩一歩前進すること、そしてコミュニケーションの範囲を意識して広げる努力を奨励し続けることに尽きます。気づけば素晴らしい成果が生まれている、そんなこともあるかもしれません。

「クラス文化」の点で私がこれまでやってきたことをいくつかご紹介します。

  • クラスを始めるときに生徒一人一人に声をかける。オンライン授業では特に大切です。名前を呼び、アイコンタクトを取って、それぞれを気にかけてあげましょう。
  • 生徒たちの準備ができるまでの冒頭の数分間、リラックスできる音楽をかける。
  • 毎回、何かしらポジティブな題材でクラスを始める。啓発的なYouTubeビデオ、元気が出そうなInstagram投稿、心が温まるようなニュースなど。褒め言葉の短いレッスンをしてから、一人一人に誰か別の生徒を褒めることで練習させてもいいかもしれません。
  • 「参加を誘うトリック」を随所に挟む。チャットボックスに一言で回答できるような質問(例:Do you prefer vanilla or strawberry ice cream? – write your answer in the chat box.)をするなど。
  • クラスの目標をおさらいする。特にセッションの最後に行うと効果的です。
  • 80:20の法則を使う。フィードバックの80%はポジティブに。努力や態度の改善を褒めてあげましょう。

その2: 教材をオンラインで一箇所にまとめておく

魅力的なコンテンツは、効果的なオンライン授業に不可欠です。じっくり選びましょう。English Firsthandシリーズでは、魅力たくさんのコミュニカティブなアクティビティを考え、選び抜いたうえで慎重に作成しました。このシリーズを採用されている場合、授業に使える教材がたくさん組み込まれています。例えば、アクティビティで生徒に配る用の教材のPDF、オーディオファイル、ビデオファイル、テスト、そして先生向けにはTeacher Manual、教え方のアドバイス、補助教材や参考資料があります。

コースにどれだけのコンテンツが必要になるか、予め考えて準備しておきましょう。English Firsthandにはコンテンツを一箇所にまとめてあるツール「Pearson English Portal」がありますが、そのようなツールがない別のコースブックを使っている方は、独自のポータルサイトを作っておくと良いかもしれません。。例えば、Googleドライブにファイルを作り、教材の本文、パワーポイント、ビデオ、オーディオファイルを入れるなどといった方法があります。

Teacher Resources in the Pearson English Portal Pearson English Portalの中の先生用のリソース

ここで必ず、生徒がコースに参加するために必要なものを全て揃えるようにしてください。教材を自作するのであれば、ご自分で適切だと感じるよりもやや難しめに設定することをおすすめします。ここでの鍵は、ハードルを上げ、生徒を引き込むことです。私は、次のことを強く信じています:

使う素材が優れていれば授業は成功したも同然だ

何より、コースを指導するリーダーであるあなた自身が、授業に使うコンテンツ満足していることも大事です。教師自身がハッピーで意欲的であることが、コースを通じて成果を出すうえで肝心だからです。


その3:授業を反転する

「反転授業」とは指導手法のひとつで、生徒の参加とアクティブ・ラーニングを重視するブレンデッド・ラーニングの一種です。反転授業では、授業を意図的に学習者中心のモデルへと変え、その間、トピックの内容を深く掘り下げて有意義な学習の機会を設けます。これを、特にペアワークやグループワークでの作業を中心に進めます。 また、生徒たちにオーディオやビデオを使った宿題やタスク、もしくはリーディング・ライティングタスクを課し、まず授業の外で新しいトピックに触れてもらうのが反転授業です。

English Firsthandを使っていると、授業を簡単に反転することができます。 Marc HelgesenやJohn Wiltshierといった、自身も教師である著者陣を筆頭に、たくさんの先生方が、English Firsthandをシリーズを利用した反転授業モデルを何年も実践し続けています。

To Doリストを作るとやりやすくなるかもしれません。紙を用意し、真ん中に真っ直ぐ線を引きます。左には「自宅」、右には「授業」と書き、生徒たちに自習中にさせたい内容と、オンライン授業の最中にさせたい内容を分けて書いて行きます。

English Firsthand 1に登場するリストの一例です:

自宅でできること:

  • Vocabulary Building: Student Bookとオーディオ利用(各ユニットの冒頭ページ)
  • Listening: Student Bookとオーディオ利用(各ユニットの2ページめ)
  • Conversation: Student Bookとオーディオ利用(各ユニットの3ページめ)
  • Language Check: Student Bookとオーディオ利用(各ユニットの6ページめ)
  • Real Stories: Student Bookとオーディオ利用(各ユニットの8ページめ)

これに加え、ボーナス・アクティビティを与えても良いでしょう。

  • 連続ドラマ形式 “Start Up”(ビデオ)でのリスニング。各ユニットの言語機能部分と相関(MyMobileWorld内の対応コース部分に収録)
  • Student BookのConversationセクションを再現した、Conversation Coach(ビデオ)を使った会話練習(MyMobileWorld内の対応コース部分に収録)
  • Quizletを使って語彙増強エクササイズ(MyMobileWorld内の対応コース部分に収録)
  • Your Story(ビデオ)。Real Stories in Student BookのReal Storiesセクションと相関
  • 個人プレゼンテーション。 FlipGrid等、ビデオ作成用無料ソフトウェアを利用

課題を与えすぎて生徒を圧倒しないよう、小さなことから、少しずつ、始めましょう。どのアクティビティがとりわけ役立つと感じたか、生徒の感想を聞くこともお忘れなく。


授業内でやること(ビデオ会議を使ったセッション中)

  • ペアワーク: Student Book (各ユニットの3〜4ページ目)利用。 SkypeやZoomなどのオンライン会議プラットフォームを利用し、ブレイクアウト(小分け)グループで約10分間。パートナーを変えてアクティビティを繰り返す(English Firsthandシリーズ内に登場するような「リアル」なコンテンツを使えば、タスクの繰り返しでも飽きさせません)
  • グループワーク: Student Book (各ユニットの7ページ目)利用。ブレイクアウトグループで最大15分間。小グループで協働タスクを完成させる
  • 個人プレゼンテーション。Student Book (各ユニットの8ページ目)Real Storiesセクションの延長。自分のビデオプレゼンテーションを共有するか、クラス全員の前、もしくはブレイクアウトグループで「生中継」しても良い
  • 全員参加の“Q&A”や “ディスカッション”または“考察”: 課題に関する生徒から教師への質問したり、教師からディスカッション・考察アクティビティ用の問いを投げかけたりする時間。特に授業の最後に行うのに向いている。セッションで教えた内容を振り返り、「クラス文化」の育成に使う

ここで大事なのは、セッション時間をクリエイティブなアウトプットに有効利用することです。生徒たちは、自分たちが主体となって学んでいると実感するべきなのです。

反転授業とは、ライブセッション中に最小限の労力で最大限の効果を得る手法である、と憶えておきましょう。オンライン授業のセッションを、あなた自身を含め、誰もが引き込まれ、楽しめるものにするために、できる範囲で適宜工夫しましょう。

バリエーションを持たせることも有効です。実際の教室と同じように、スクリーン上で見せる画像やビデオクリップ、音/音声、音楽、効果音、質感といったものに変化をつけ、生徒に様々な体験をさせましょう。どんなにルックスに自信のある先生でも、ひたすら先生の顔を見ているだけのセッションに終始しないように!


まとめ


オンライン授業には様々な障害がつきものです。ストレス環境の下で授業の準備をしなければならないときは、ことさら辛いかもしれません。新型コロナのパンデミックをきっかけに私たちの生活のあらゆる側面が豹変してしまった今、やはり、教え方においても、必要とされる変化に順応することが大事です。このパンデミックを、全世界があらゆる次元で協力し合う時代を作っていくチャンスと捉えれば、人類が生き残り、繁栄し、そして将来の問題を解決する方法を学ぶためには、地球資源を共有し、知識を共有する必要があるのだと気付かされるでしょう。

教えることの基本に立ち返り、教師という職を選んだ理由を思い出せば、有意義で満足感のあるオンライン授業を実現する方法は必ず見つかります。
適切なテクノロジーを学べば役に立ちますが、クラスの成否を分けるのは、あなた自身のリーダーシップと計画、そして生徒や生徒が直面する問題の数々への共感力です。これは、私が担当する教師研修コースで研修中の教師に何度も言っている言葉です。

この記事でご紹介した「コツ」を、これからオンラインクラスを準備し、実施して行くにあたって手引きとして役立ててください。誰もが大変な思いをしている時期ですが、一緒に頑張っていきましょう。



その他のリソース


English Firsthandの著者Marc Helgesenが生徒が自宅でできるワークシート“Talk to yourself”を作りました。
以下のリンクからダウンロードいただけますので、是非ご利用ください。


ダウンロードはこちら (Zip/PDF, 3.5MB)


筆者Michael Rost紹介


Impact Issuesをはじめ、ピアソンのEnglish FirsthandやContemporary TopicsなどのESL/EFLコースブックのシリーズエディター。4レベル構成の完全オンラインコースPearson English Interactiveの主要著者でもある。言語学習、なかでもオーラルコミュニケーションの発達に関して数々の学術論文を発表しており、Google Scholarより参照可能。




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