生徒が英語で自分の意見を言いたくなる3つの「コツ」

EFLの教室では、生徒が英語で本当のコミュニケーションを行う機会を与えてあげることが大切です。本当のコミュニケーションとは、教科書のダイアログをAさん役とBさん役に分かれて読み合わせたり、暗記したりではなく、自分が本当に聞きたいことを相手に尋ね、本当に言いたいことを相手に伝える、という意味です。思わず聞いてみたくなる、思わず言いたくなるという気持ちが生徒に芽生え、会話を楽しむ、という状況は、どうすれば作り出すことができるでしょうか。

私が最もおすすめしたい効果的な方法は、「生徒が英語で意見を述べ合うこと」です。なぜ意見交換がよいのでしょうか。意見交換は本物のコミュニケーションです。「ドリル」や「練習」とは違います。また、意見を述べるためには思考・判断力が必要で、生徒の知的レベルに合っています。それは言葉の深い習得にも繋がります。何よりも、生徒は自分の意見を伝え、他の人の意見を知ることが楽しいと言います。

でも、英語で意見を述べるなんて難しい、と思われますか?いいえ、大丈夫です!適切な教材と指導法があれば、初級の生徒でさえ英語での意見の交換を楽しめます。私は日本の学校で長年教えていますが、日本の若者は意見を持たないとか、人と違う意見を言いたがらない、など、否定的な意見を聞くことがあります。でもそんな事はありません。日本の生徒は意見交換を楽しみます。人の意見を知りたいと思い、意外かもしれませんが、人と異なる意見を言うことをためらいません。

ただし、生徒に自分の意見を言いたくさせるには、「コツ」が必要です。どのような「コツ」なのでしょうか?3つご紹介したいと思います。
  1. 面白くて身近なトピックを選ぶ。
  2. ユニークなスタンスで論点を示す
  3. 生徒が苦労なく話せる工夫をする。

具体的に見てみましょう。

その1. 面白くて身近なトピックを選ぶ。

まず、トピックの選定が重要です。生徒が興味を持つ話題でなければ、話したい気持ちが芽生えません。ファッション、友情、恋愛、就職、結婚、少子高齢化社会、地球温暖化、キャッシュレス時代、スマホ中毒、A.I、プラスチックごみ問題、などなど、身近な話題から社会問題まで、様々なトピックがあります。生徒がどのような話題に関心があるのか、どの話題なら話したくなるのか、知る必要があります。トピックをリストアップして選ばせるのも、良い方法です。教師の予想とは違うトピックが選ばれることも結構あり、教師の勘が当たらないことも。ただし、レベルにもよりますが、あまり軽い話題ばかりに偏らないように少しだけ介入することも必要です。私は中級以上の生徒であれば、「死刑制度」に関しては、「先生のおすすめトピック」として必ずリストに載せます。生徒の英語力にかかわらず人気があるトピックは、やはり「友情」「恋愛」「結婚」などですね。

しかし、興味のあるトピックを提示しただけで生徒が話したくなるわけではありません。さらなる「コツ」が必要です。

その2. ユニークなスタンスで論点を示す。

こうしてトピックを選んだら、次は論点(観点・主題)の設定です。ここで大切なことは、生徒が思わず何か言いたくなるようなユニークな論点を投げかけることです。分かりやすい例として、「英語学習の意義」というトピックをあげましょう。このトピックに対して、「英語学習はとても大切だ」. という論点を提示し、賛成か反対かを問うとどうでしょう。おそらくほとんどの生徒は「確かにそうだ。当たり前だよ」と思い、議論にもならないでしょう。感情も動きません。ところが、観点を「英語学習は必要ない」とするとどうでしょう。おそらく生徒の心の中では、「え?なぜ?」とか、「そんなのありえないでしょ」とか、「案外そうかもしれない」などのつぶやきが起き、何かを考え始め、何か言いたくなります。

もう一つ、「結婚」というトピックで考えましょう。「あなたは結婚についてどう思いますか」と問われたら、生徒は何と答えていいのか戸惑います。ここでも、生徒が思わず意見を言いたくなるような、ユニークでインパクトのある主題を設定する必要があります。例えば、「人は結婚する必要はない」にするとどうでしょうか。この観点に対して、賛成か、反対か、問いかけます。これは、すぐに反応を生みます。「そうだよ、結婚は個人の自由だよ」と思う人もいれば、「やっぱり私は、結婚は必要だと思う」とか「結婚する人が減ると、少子化が進むよね」と思う人もいますね。生徒は少し考えを巡らす事になり、自分の気持ちに気づいたり、意見を確認できたりします。そして何か言いたくなるようです。他の人の意見を聞いて、「それは違うよ!」と反論したくなることもあるでしょう。または、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と、自分の気持や考えに変化が現れることもあります。

生徒に思わず何か言いたくさせる「コツ」はおわかりいただけたでしょうか。つまり、「アウトプットの意欲」を出させる、ということです。しかし実際にアウトプットをするには、英語力が要ります。語彙や表現を知らないと、自分の考えを伝えることができません。また、間違えたら恥ずかしい、などの不安感もアウトプットの妨げとなります。それらを克服する「コツ」は?


その3. 生徒が苦労なく話せる工夫をする。

生徒の多くは、自分の言いたいことを英語ですんなりと言い表すことには苦労します。「こう言いたいけど言えない!」とか、「これって英語でどう言えばいいの?」とか、「単語がわからない!」など、ストレスの塊となってしまいますね。そこで、教師が様々な意見のサンプルを用意し、それに対して、生徒がI agree. またはI disagree.というだけで意見を示せるようにするのも一つの案です。または、いくつかのサンプルから自分の意見に一番近いものを選ばせる事もできます。これなら、文を一から産出しなくて良いので、ハードルがぐっと下がります。生徒はサンプルの一部をつなぎ合わせたり、補ったりして自分の意見をまとめることもできます。(勘の良い方は、アウトプットの活動でありながら実は知らず知らずのうちにインプットをしていることにお気づきでしょう)

できれば、先程述べたユニークなスタンスの論点を示す短い会話、モノローグ、記事文などをできるだけ簡単な英語を用いて作成するとよいでしょう。その教材自体が、意見を述べる際に利用できる表現や文章をたくさん含んでいるのが理想的です。テキストの中に英語のヘルプがあることで、生徒はあまりフラストレーションを感じずに意見が言えるのです。

このように「足場がけ」(scaffolding)をすると、とりあえず相手に自分の意見を伝えることができ、大きなストレスなく、コミュニケーションが成立します。相手の意見を知ることができ、楽しい活動となります。

また、生徒が不安やストレスを感じないように、いきなり教師やクラス全体に意見を伝えることは避け、まず各自がサンプル意見を見て選ぶ、などの個人作業をしたあとで、ペアワークをして伝え合い、必要があればそのあとグループで、などのように、無理のない進め方をします。「意見」なので、正しい答・間違った答えがないことも、安心して話せる要因の一つですね。

まとめ

興味のあるトピックで、インパクトのある論点であれば、生徒は思わず意見を言いたくなります。そこに、語学力を補い不安を取り除く工夫があれば、生徒は英語力にかかわらず、知的レベルに見合った、意味のあるコミュニケーションを楽しむことができます。同時に思考・判断力も養えますし、社会問題に目を向けさせることもできますね。ぜひ試してみてください。

ちなみに、私のクラスでいつも大盛り上がりになるトピックは、「デート代は、男が払うか女が払うか」「男女間に友情は成立するか」「美容整形はありか」「国際結婚はするべきか」などです。先学期は、「プラスチックごみ問題」にとても関心が集まりました。皆さんのクラスでは、どんな話題が人気となるでしょうか。


山中純子先生について

大学や専門学校で長年英語指導に携わってきたベテラン講師。Impact Issues共著者であり、多数のEFL関連書を著作。言語指導者や学習者を対象にプレゼンテーションやワークショップを数多く行っており、関心分野は批判的思考力の養成、討論能力、リーディング指導、多読の普及など。現在は愛知学院大学と中京大学で教鞭を取っている。

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